静岡市文化・クリエイティブ産業振興センター(CCC)

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Creative NOWデザインの役割

モノづくりに携わるクリエーターとして思うこと

CCC プログラム・ディレクター 鈴木啓子

私がデザインに携わり始めた頃、1980年後半から90年初頭にかけて、日本はバブル景気の真只中。消費することは美徳だった。当時勤めていた事務所では、メーカーの新製品づくりのために新しいデザインを次から次へと休むことなく生み出していた。使う素材がどうやって作られているのか、又、製品として役目を終えたあと、どうやって処分されるのか、そんなことに想いを寄せる余裕はなかった。私は、特に疑問を持たずにボスに言われるまま、ひたすらデザインしていた。ある意味で、デザイナーとして醍醐味さえ感じていたのだ。今、考えると「もしかして、自分は多大なごみをデザインしていたのではないか・・・」と恥ずかしくなる。

それから30年経ち、時代は大きく変わった。2015年の国連サミットで採択されたSDGsの概念は、もはや世界共通の合言葉となり、それに取り組まない企業や賛同しない消費者は白い目で見られる。2021年のノーベル物理学賞に真鍋淑郎氏らが受賞され、「地球温暖化」への対策が世界の最重要課題として改めて浮かび上がった。このような事実から、これからのモノづくりにとって、資源の再利用・省エネルギー化は避けて通れない課題であることは明白だ。今、注目を集めているのが、循環型消費という考え方だ。アメリカ発Loopというブランドは、繰り返し使える専用容器を使って、それを回収・再利用することでごみを出さないライフスタイルを提案している。食品や飲料、日用品など、日本ではイオンと業界トップのブランド24社が連携。日常生活に使う身近な商品だからこそ、その影響力は大きく、より多くの人々の生活に広がる。これまでの使い捨て文化を否定して生まれたこの循環型消費のヒントとなったのが、日本でかつて行われていた牛乳瓶の回収だという。

時代は立体的な渦を巻くように動いていると感じてならない。現在の価値観を否定し、過去をヒントにして新たな価値観が生まれる。時代が進むほど、その渦が大きくなって成長していく。その成長渦の先を読むためには、まずはこの宇宙の法則を体感し、過去を振り返り、今や逃れない存在となっている情報化社会に対応し、何より大切な地球環境への配慮が大前提となる。そのうえで、理想の未来を想像しながら現在をデザインし、社会課題の解決に繋げることがモノづくりに携わるデザインクリエーターの役割だと思う。

 
プロダクトデザイナー/CCC プログラム・ディレクター 鈴木啓子

<このコーナーは個人の見解リポートです>

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