- 挽物のその先 -
「挽物(ひきもの)って何ですか?」
と、よく言われる事があります。
挽物とは、木工ろくろや旋盤を使用して木を回転させ
刃物で削って作る製品の事を言います。
木のお皿やお椀、けん玉やこけし、家具の脚など
身の回りにある丸い木製品は挽物の技術が使われている事が
ほとんどです。
自分自身恥ずかしながら、挽物との出会いは修行入りした時が初めてでした。
静岡デザイン専門学校を卒業した後、挽物の世界に弟子入りし
約10年に渡って職人としての技と心を学んできました。
親方達が挽物製品を作るための道具から機械まで
何から何まで自作する姿に
どんどんと挽物の世界に魅了されていきました。
それと同時に自分の考えや想いを挽物で表現したいという思いが強く湧き上がりました。
2015年に独立し、
「挽物を通じて幸せと感動を共に創り出す」を
目標に「挽物所639」を立ち上げました。
当時、表現力が身についたと思って自信満々な気持ちでしたが
周りの評価は低く、今思えばできていなかった事が沢山ありました。
そんな中でも応援してくれる周りの方々によって、
絶えず挑戦し続けることを忘れずに取り組んできました。
その甲斐あって2016年にLEXUS NEW TAKUMI PROJECTの
静岡県代表に選抜される事になりました。
せっかくのチャンス、甲子園に出たつもりで
静岡県らしさとは、日本人らしさとは何かと
自問自答しながら全国で一番になろうと意気込んで挑みました。
でもそこで全国各地から集まった色々な業種の方たちと出会い、
それぞれがものづくりを通して奮闘している姿をみて、
彼らは競い合う敵同士ではなく、本当は自分と同じように
挑戦している仲間なんだと実感しました。
2019年4月では、イタリアフォーリサローネに出展し
日本人の繊細さを海外で評価していただきました。
同年11月には、京都平安神宮額殿 LEXUS CREATORS Connectionに出展し
トップクリエーターのアンリアレイジ森永邦彦氏との
共同作品「300%ライダーズジャケット」を発表しました。
その成果が認められ、
2020年アンリアレイジ2020-2021秋冬パリコレクションでは
イヤリングとハイヒールのヒール部分の制作に関わることができました。
新しい事をしようとすると失敗もします。
そしてその失敗の原因を一つずつ解決していくという連続です。
何度も何度も諦めずに立ち向かう。
挑戦できる事に感謝しながら。
近所のお店のおかみさんが、
そんな自分を見て
「燃えてるね。燃え続けているね。」
と言ってくれたのがとても嬉しかった事をよく覚えています。
これからもずっと
どんな場所、どんな環境、どんな時でも
変化を恐れずに挑戦し続けて行こうと思います。
挽物所639/挽物師
百瀨聡文
<このコーナーは個人の見解リポートです>
三枚目 写真右:
ファッションデザイナー ANREALAGE 森永邦彦氏