静岡市文化・クリエイティブ産業振興センター(CCC)

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Creative NOW「白い紙」の可能性

「白い紙」は、私の作品づくりになくてはならない素材です。

現代アーティスト 金原明音

ドローイングを描く紙、そしてインスタレーションや映像の小道具でもあります。
ドローイングは私にとっては言語でもあり、紙の上に数本のラインで芸術的な意図を捉えることができ、映像やインスタレーションにテーマを与えています。

1階ギャラリーの床に埋め尽くされた大量の紙飛行機は、一つずつ元の平らな紙に開かれ、折ジワの痕跡を残した紙の束がいくつもいくつも積み重なっていきます。
2階ギャラリーを使用し撮影したビデオ作品では、左右対称にある試作室のドアを通し、紙飛行機が同時に飛び交います。
この撮影のために12人のエキストラの方が参加してくださいましたが、作品の一部になることを自然と肌で感じとれる方達ばかりだったので、あっという間に一体感を生み出し、とても素晴らしい撮影ができました。そしてテイクを重ねるごとに、誰もが共通の仕上がりイメージを持っていることが分かり、これは各々の体感リズムに任せたほうが良い映像になると確信し、徐々に自分の意思を手放すように心がけました。ここまで相手を信用し委ねることができたのは初めてです。

渡独歴25年以上。普段はヨーロッパの現代アート世界で活動していますが、ドイツでは私の作品はとても日本的な表現と言われます。日本的とはなんなのか?

私のドローイングは数少ない線で描かれ余白が多いですが、この余白が余白として終わらない、むしろ「なにもないところにあるもの」を想像させるのが日本的と言われる要因の一つだと思うのですが、ドローイングに生まれた余白と、撮影時に参加者と感じた間合い、自分の意思を手放しながらも、私の意図する作品が出来上がっていく様は、ドローイング制作で説明的なものを削っていく作業に似ていたと思います。

こうして出来上がった作品を、皆さんにどのように受け入れられるのか、ドキドキしながらもとても楽しみです。
静岡とベルリンを行きかう複眼的な目線でのアートを静岡から発信できること、作家にも鑑賞者にも、ちょっと新しい息吹を感じてもらえたらと願っています。
6月28日(土)のトークイベントでは、皆さんとの対話を楽しみにご参加をお待ちしています。

金原明音 (きんばらあかね)
1971年 静岡・清水区生まれ 1998年渡独。 2006年ハンブルク芸術大学を卒業し、 以後、ドイツを主にヨーロッパを中心に活動。 また幾つかの国際アーティスト・レジデンスプログラムに参加。 べルリン在住。

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