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[What is the role of design and art in the future society?]
CCCアドバイザー 甲賀雅章

効果という視点ではなく役割という思考が必要だ。

20代後半から30代まで、本当にデザインすることが楽しかった。それは単に、意匠的に作品を創るという表層的デザインではなく、企業が抱える課題をデザイン思考で解決する行為であった。特に、30代前半まではコミュニケーションデザインを主にしていたので、効果も非常に分かりやすかった。いい結果を出せば、それが評判となり仕事が舞い込んでくる。勿論、作品としてのクオリティも高かった。いいクリエイターも集まってきた。素晴らしい循環が起こり、ビジネスとしても大成功を収めた。デザインの領域も広がり、CI、Branding、プロダクト、建築など実に多岐にわたり、国内外の一流クリエイターとも仕事をするようになった。
そんな有頂天な私のデザインに対する考え方が最初に変わったのは30代後半である。国内外の街の活性化事例に触れるうちに、この静岡を変えたいと思い始めた。今で言うところのコミュニティデザイン、或いはソーシャルデザインの領域に入り始めた。1992年からスタートした大道芸World Cupはその代表的デザインの一つである。自治体、商店街、地場産業の活性化に力を注ぐようになった。しかし、まだこの頃は、対象こそ企業から社会に移り始めたが、課題解決というデザイン定義は変わっていなかった。勿論、今でもデザインが課題解決のための有効な思考、手段であるということには異論はないが、僕がSpeculative Design という考え方に目覚めたのはある企業のコンサルテーションを始めた時からである。
今直面している課題を短絡的に考えるのでなく、未来における使命と可能性を問い、思索するところからデザインしていく。つまり、未来のシナリオを創ること、それがデザインの役割ではないかと思い始めた。するとデザイナーに求められる能力そのものの変革が求められる。多くのアーティストに触れたことも大きな影響を与えたと思う。

僕は、「デザインは課題解決するもので、アートは問題提起する」とずっと前から概念づけていた。しかし、アーティストが社会や地域の課題解決にも大きく貢献している姿を見るにつれ、この考え方も大きく変化してきた。韓国はデザイン教育やアート事業に非常に力を入れているが、フェスティバルにおけるシンポジウムのテーマは「ストリートシアターの社会的役割」が圧倒的に多い。私たちも、ビジネスという視点から少し離れ、デザインやアートが社会や人間に対して何ができるのか、その役割とは何かを問うべきではないだろうか?
私は、その一つの回答、提案として7月10日、11日にMobile Theatre「天空の謡 大地の書簡」という身体表現作品を静岡市登呂遺跡公園で上演した。これは、私にとって、一種のSpeculative Designでありソーシャルアートの一つであると思っている。Beyond コロナにおける新しい表現様式のデザインであり、潜在資源を掘り起こし、新たな光を与えるというアートの役割の一つの実験である。
デザインとアートの素晴らしさは、見えないもの、過ぎ去ったものを可視化できるということである。そこにRoleが秘められているように思う。Creator自身がinnovationを起こすときかもしれない。

Creator/CCCアドバイザー
甲賀雅章

<このコーナーは個人の見解リポートです>